選挙運動計画の作り方#
はじめに#
このページは選挙運動計画作りを支援するためのものです。 最初にこのページの目次を読んで全体の流れをおおまかに理解してください。 次にページを順を追って読み、すべての質問に回答し、すべての設問に記入してください。 そうすることで、選挙運動計画を作るための最初の一歩を踏み出せるはずです。
このページにはどんな選挙運動にも応用できる一般的なステップをまとめています。 もし、いま参加している選挙運動には当てはまらないこと、間違っていることや改善できることをみつけたら、ぜひディスカッションへ投稿してください。
選挙運動の基本#
選挙運動の基本は「投票する人々に対して説得力のあるメッセージを繰り返し伝えること」です。
選挙運動の基本を守らないと3つの失敗パターンに追い込まることになるでしょう。
❓ 説得力がない
このパターンの選挙運動は計画的に支持者を増やせないためどんどん状況が悪くなります。
💸 合理的な計画がない
このパターンの選挙運動は時間・資金・人材を浪費しつづけます。 選挙期間中の出来事・対立候補の行動・マスコミの報道などに気を取られ、外部要因への反応に終始します。
😴 当選するための努力ができない
このパターンの選挙運動は計画どおりに活動できない理由を並べ立て、最終的には負けた理由を言い訳します。
メッセージ
努力ができない
👍 成功する選挙運動
つまり成功する選挙運動とは、説得力のあるメッセージを見つけ、そのメッセージを適切な有権者グループに向けて、努力して何度も何度も繰り返すというコミュニケーション・プロセスなのです。
選挙調査#
選挙運動準備のために必要な選挙調査をしましょう。 選挙区・対立候補・有権者についてすべてを知ることはできません。 しかし、優先順位をつけて時間をうまく使うことで、効率よく情報をまとめることができます。
作業1. 選挙調査ミーティング
回答するべき質問#
次のような選挙調査質問集の質問に対してできるだけ詳細な回答を集めましょう。
選挙の種類と規則は?
選挙区の特徴は?
有権者の特徴は?
過去の選挙ではどうだったのでしょうか?
今回の選挙に影響を与える主な要因は?
候補者の強みと弱みは?
有力な対立候補の強みと弱みは?
いくつかの質問はすぐに回答できるでしょうし、調査が必要なものもあるでしょう。 調査しても分からない質問は経験と勘で回答を予想することになりますが、それは最後の手段にしてください。
これらの質問へできるだけ詳細に回答をするために調査に時間をかけることが重要です。 ただし、調査には制限時間を設定し、それを守ることも重要です。 時間をかけ過ぎるとせっかく集めた情報の活用が遅れてしまいます。
世論調査#
この種の調査には、世論調査やフォーカスグループなど、より科学的な方法でのデータ取得が有効な場合もあります。 どのようなリソースが利用可能か、リソースをかける価値があるかどうかを判断する必要があります。 小規模な地方選挙では選挙運動チームや予算が小さいため、高コストな世論調査を検討するべきではありません。 逆に広告を利用するような大規模な選挙運動ではその広告のメッセージが有効かを確認するために、広告費の一部を使った事前調査を検討するべきです。
選挙運動目標設定#
自候補者が当選するための選挙運動目標を設定しましょう。
次の2つの選挙運動目標は特に重要です。
予測説得対象人数
自候補者が当選するために働きかける必要がある人数です
予測説得対象世帯数
自候補者が当選するために働きかける必要がある世帯数です
作業2. 選挙運動目標の設定
集めた情報を使って次の質問に対する回答を共有ノートにまとめましょう。
選挙区内の人口: 選挙区には何人の人(有権者だけでなく)が住んでいますか?
選挙区内の有権者数: 今回の選挙に投票できる人は何人いますか?
想定投票率: 今回の選挙で有権者のうち投票するのは何パーセントと想定しますか?
予測投票者数: それは人数にすると何人ですか?
選挙区の候補者数: 今回の選挙の候補者は何人いますか?
選挙区の対立候補者数: 本気で選挙運動をする対立候補者は何人いますか?
各候補者の得票率: もし今日が投票日なら各候補者の得票率はそれぞれ何パーセントと予想しますか?
当選に必要な想定得票率: 当選するために必要な票数は総投票数の何パーセントと想定しますか?
当選に必要な予測票数: それは票数にすると何票ですか?
平均世帯有権者数: 各世帯に住んでいる有権者は平均何人ですか?
世帯内の想定投票先影響率: 同じ世帯に住む有権者が世帯内の投票先に与える影響は何パーセントと想定しますか?
当選に必要な予測世帯数: 当選するために支持を受ける必要があるのは何世帯ですか?
説得可能性: 自候補者への投票を説得できる可能性があるのは何パーセントと想定しますか?
予測説得対象人数: 当選するために働きかける必要があるのは何人ですか?
予測説得対象世帯数: 当選するために働きかける必要があるのは何世帯ですか?
選挙運動目標の計算に必要な情報#
選挙運動目標の計算に必要な情報のいくつかは、経験と勘で想定する必要があります。 過去の選挙から得た情報を組み合わせることで予測の精度を高めましょう。
選挙区内の人口
前回の選挙結果や自治体のウェブサイトなどから入手しましょう。
選挙区内の世帯数
前回の選挙結果や自治体のウェブサイトなどから入手しましょう。
選挙区内の有権者数
前回の選挙結果や自治体のウェブサイトなどから入手しましょう。
想定投票率
過去の類似の選挙を調べることで、今回の選挙でどれくらいの有権者が投票するかを次のように想定できます。
前回の市議選の投票率が35%で、状況を変えるような要因がなければ、今回の市議選の投票率も35%でしょう。
前回の衆院選の投票率が55%で、今回は市議選と衆院選が同時にあるとすれば、両方の投票率は55%でしょう。
当選に必要な想定得票率
過去の類似の選挙を調べることで、今回の選挙でどれくらいの有権者が自候補者に投票すれば当選するか想定します。 複数の候補者がいる選挙では25%あるいはそれ以下の得票率でも当選するかもしれません。
世帯内の想定投票先影響率
同じ世帯に暮らしている有権者がどれくらい同じ候補者に投票するかを予想します。 たとえば世帯内の家族が全員同じ候補者に投票する場合は100%、5人家族の本人を除く4人のうち1人が同じ候補者に投票する場合は1/4・25%とします。 同じ世帯に暮らしている夫婦が同じ候補者に投票する可能性が高い場合はどちらか1人を説得できれば2票を期待できます。 よく分からない場合は50%としておきましょう。
説得可能性
一般的な有権者を自候補者へ投票するように説得できる可能性を予想します。 次の4種類の有権者の割合を想像してみましょう。
支持層: 自候補者へ投票すると決めている有権者
浮動層: 投票先をまだ決めていない有権者
対立層: 対立候補者へ投票すると決めている有権者
反対層: 自候補者にだけは投票しないと決めている有権者
説得可能性は予測投票者数のうちの浮動層の割合で代用できます。
選挙運動目標の計算方法#
選挙運動目標計算Googleスプレッドシートをコピーして使いましょう。 選挙運動目標の計算に必要な情報を記入すれば、次の量を自動的に計算できます。
平均世帯人数
平均世帯有権者数
予測投票者数
当選に必要な予測票数
当選に必要な予測世帯数
予測説得対象人数
予測説得対象世帯数
具体的な選挙運動目標計算例#
たとえば選挙区の人口が13万人だとしましょう。 このうち、選挙権年齢未満の子供や外国人などの非有権者が3万人いるので、有権者の総数は10万人です。 前回の市議選の投票率は50% で5万票でした。今回も同じようになると予想します。
項目 |
値 |
単位 |
---|---|---|
1. 選挙区内の人口 |
130,000 |
人 |
3. 選挙区内の有権者数 |
100,000 |
人 |
4. 想定投票率 |
50% |
|
予測投票者数 |
50,000 |
人 |
前回の市議選では複数の候補者が立候補し、当選した候補者の得票率は34%、票数は17,000票でした。 1世帯あたりの平均有権者を2人とすると8,500世帯です。
項目 |
値 |
単位 |
---|---|---|
1. 選挙区内の人口 |
130,000 |
人 |
3. 選挙区内の有権者数 |
100,000 |
人 |
4. 想定投票率 |
50% |
|
5. 当選に必要な想定得票率 |
34% |
|
予測投票者数 |
50,000 |
人 |
平均世帯有権者数 |
2.0 |
人/世帯 |
当選に必要な予測票数 |
17,000 |
票 |
当選に必要な予測世帯数 |
8,500 |
世帯 |
働きかけたすべての有権者をあなたに投票するよう説得できるとは限りません。 そこで、17,000人あるいは8,500世帯の有権者から票を得るためには、より多くの有権者に働きかけることを考えなければなりません。 仮に10人の有権者のうち7人・ 70% は投票先を説得可能だとしましょう。 17,000人・8,500世帯の支持を得るためには、24,286人・12,143世帯の有権者に働きかける必要があります。
項目 |
値 |
単位 |
---|---|---|
1. 選挙区内の人口 |
130,000 |
人 |
3. 選挙区内の有権者数 |
100,000 |
人 |
4. 想定投票率 |
50% |
|
5. 当選に必要な想定得票率 |
34% |
|
7. 説得可能性 |
70% |
|
予測投票者数 |
50,000 |
人 |
平均世帯有権者数 |
2.0 |
人/世帯 |
当選に必要な予測票数 |
17,000 |
票 |
当選に必要な予測世帯数 |
8,500 |
世帯 |
予測説得対象人数 |
24,286 |
人 |
予測説得対象世帯数 |
12,143 |
世帯 |
10万人に働きかけて説得するよりも、1万2千人の家族に働きかけて説得する方がずっと簡単に見えるはずです。 このように、選挙運動目標を計算することで説得する相手を絞り込んでいくことができます。
実際の計算を自分の手でやる必要はありません。 選挙運動目標計算Googleスプレッドシートをコピーして使いましょう。
参考) 選挙運動目標の計算式
有権者ターゲティング#
有権者をグループに分けてそれぞれのグループの性質を検討することで説得するべきグループを特定しましょう。 この作業は「有権者ターゲティング」または単に「ターゲティング」と呼びます。
有権者ターゲティングの理由#
有権者ターゲティングをする理由は2つあります。
時間・資金・人材を節約できる
説得するべきグループを特定できれば、そのグループの有権者に対する説得に時間・資金・人材を集中できます。 逆にグループを特定できなければ、すべての有権者を説得しようと多くの時間・資金・人材を浪費することになるでしょう。
説得力のあるメッセージを作成できる
説得するべきグループを特定できれば、そのグループの有権者に対して説得力のあるメッセージを作成しやすくなります。 逆にグループを特定できなければ、すべての人にすべてを約束するような空虚なメッセージを掲げることになるでしょう。
有権者ターゲティングの方法#
説得するべきグループを特定するためには、説得するべきグループとその他のグループがどう違うのか理解する必要があります。 グループの違いを理解する主な方法は2つあります。ほとんどの選挙運動では両方の方法を組み合わせて使用します。
地理的ターゲティング
有権者が住んでいる場所によって説得するべきグループかどうかを特定する方法です。 自候補や対立候補の地元に住む有権者によそ者の候補者へ投票するように説得することは難しいかもしれません。 地域毎の過去の類似の選挙結果データを見つけることができれば、浮動層の割合や投票率を予想できるでしょう。
人口統計的ターゲティング
有権者を年齢・性別・収入・教育レベル・職業・文化的背景といった属性によって説得するべきグループかどうかを特定する方法です。 有権者はそれぞれ固有の属性・現状認識・問題意識を持っているため、有効なメッセージは有権者毎に違います。 似た属性の有権者のグループは問題意識も似ている可能性が高く、同じメッセージにも反応しやすいでしょう。
自候補が所属するグループを中心に、説得するべきグループを広げましょう
グループが小さすぎたり、対立候補と背景が似ている場合には効果が薄れることがあります
対立候補に譲るグループを明確にしてメッセージを広げすぎないようにしましょう
問題意識が異なるグループを同時に説得対象にすることは避けましょう
有権者属性分割#
選挙運動メッセージ作成#
対象有権者に届く明確で簡潔な選挙運動メッセージを作成しましょう。
よい選挙運動メッセージの特徴は次のとおりです。
短い
嘘がなくて信用できる
有権者にとって重要で説得力がある
対立候補との違いがわかりやすい
わかりやすくて心に響く
伝える対象が絞られている
一貫したメッセージを何度も繰り返し伝える
作業6. なぜこの役職に立候補するのですか?
対象有権者に届く明確で簡潔なメッセージを作成しましょう。
理由のリストアップ: 有権者が自候補者や政党に投票すべき理由をすべてリストアップしてください。
理由を要約する: 最も説得力のある理由を選んで簡単に説明してください。 「なぜこの役職に立候補しているのですか?」または「なぜあなたを支持する必要があるのですか?」という質問に対する答えになるはずです。
もっと短くする(1分以内): 理由の要約を声に出して読んで時間を計ってください。 1分以内に読み終える必要があります。超えていたらメッセージを削ってください。長いフレーズや説明は削除してください。
チェックする: よい選挙運動メッセージの特徴に当てはまっているかチェックしてください。
何度も書き直す: チェック結果を参考にして書き直します。書き直した後でも1分以内で話せるようにしてください。 何度も書き直したり有権者に話すとどんどん良くなっていきます。
メッセージボックス#
対立候補との対比
課題の重要性と位置付けの決定#
有権者との接触計画の策定#
有権者との接触計画を作成する。
選挙運動実行#
できた計画を実行する。